楽しくないと続かない? 続けたいことを少し楽しくする5つの小さなコツ
「健康のために運動しよう」「将来のために勉強しよう」。そう決めて始めたのに、気づけばやらなくなっている。理由ははっきりしているのに、なぜか体が動かない。そんな経験がある人は多いと思います。
それは、あなたの意志が弱いからではないかもしれません。「あとで良いことがある」だけでは、人はなかなか続けられないことが、研究で分かってきているからです。
この記事では、続けたいことを「少しだけ楽しく」するための、5つの小さなコツを紹介します。
1. 「あとで良いこと」より「いま楽しいこと」に目を向ける
シカゴ大学とコーネル大学の研究者が、新年の目標(運動や勉強など)を立てた人たちに、しばらくたってから「まだ続けているか」をたずねた研究があります。
続いている人を分けたのは、「健康になれる」「役に立つ」といったあとで得られる良いことではありませんでした。続くかどうかと強く結びついていたのは、取り組んでいるその時間が楽しいかどうかだったのです[1]。
おもしろいのは、多くの人が「自分は、あとで良いことのためにやっている」と答えていたことです。続けるために大事だと思っていることと、じっさいに続けさせてくれるものが、ずれていたのです。
同じ研究者たちは、ジムに通う人の実験もしています。種目を「楽しめるかどうか」で選んだ人のほうが、「体にいいかどうか」で選んだ人より、多くのセットをこなしていました[2]。
続けたいことがあるなら、「なぜやるか」を何度も言い聞かせるより、「どうすれば、やっている時間が少し楽しくなるか」を考えてみてください。
2. 楽しみなこととセットにする
「楽しくする」いちばんかんたんな方法は、好きなことと組み合わせることです。
ペンシルベニア大学の研究チームが、「もっと運動したい」と考えている大学のジムの会員226人で調べた実験があります。あるグループは、続きが気になる小説の朗読(オーディオブック)を、ジムにいるあいだだけ聴けるようにしました。
すると、このグループは、何もしなかったグループよりジムに来る回数が増えました。「続きを聴きたいから、ジムに行く」という流れができたのです[3]。
ただ、この効果は、感謝祭の休みをはさんだあとは小さくなっていました。いちど間があくと、セットにしていたことも途切れやすいのかもしれません。万能ではない、と知っておくと安心です。
たとえば、こんな組み合わせが考えられます。
- 好きなポッドキャストは、ウォーキングのときだけ聴く
- お気に入りの紅茶は、勉強の机でだけ飲む
- 好きな音楽のプレイリストは、片づけのときだけかける
ポイントは、楽しみなことを「そのときだけ」にしておくことです。いつでも聴ける・飲めるようにすると、続けたいことのごほうびにはなりにくくなります。
3. やり方を自分が楽しめる形に変える
続けたいことの「中身」は同じでも、やり方は変えられます。
- 走るのが苦手なら、景色のいい道を歩く・好きな音楽を聞きながら歩く
- 単語帳がつらいなら、好きな海外ドラマのセリフで覚える
- 日記が重いなら、その日よかったことを一言だけ書く
1つめのコツで紹介したジムの実験のように、「いちばん効果がありそうなやり方」より「自分が楽しめるやり方」を選んだほうが、結果として長く・たくさんできることがあります[2]。
「楽しいやり方を選ぶなんて、甘えでは?」と感じる人もいるかもしれません。でも、楽しさは手を抜くことではありません。明日もまたやりたいと思える理由を、自分で用意しておくことです。気合いは日によって上がったり下がったりしますが、「あれが楽しみだからやる」という理由は、疲れた日にも残ってくれます。
効果がいちばん高いやり方でも、続かなければ0です。少し効果が下がっても、続けられるやり方のほうが、長い目で見ると大きく積み上がります。
また、時間を短く区切ってゲームのようにするのも1つの方法です。25分だけ集中して休む方法は、ポモドーロ・テクニックの記事で紹介しています。
4. 小さな「進んだ」を感じられるようにする
楽しさは、取り組みそのものだけから生まれるわけではありません。「少し進んだ」と感じることも、大きな楽しさになります。
ハーバード・ビジネス・スクールのテレサ・アマビールさんたちは、7つの会社の26のチームで働く238人に、毎日の出来事と気持ちを日記に書いてもらいました。集まった日記は、およそ1万2千日分です。
それを調べると、気分がよく、やる気が高かった日にいちばん多く見られたのは、「仕事が前に進んだ」と感じた出来事でした。しかも、その多くは大きな成功ではなく、ささいな前進だったそうです[4]。
この研究は、おもに会社で働く人を対象にしたものなので、そのまま毎日の習慣に当てはまるとは言い切れません。それでも、「小さな前進でも、人の気持ちを明るくする」というのは、試してみる価値がありそうです。
そこで、進んだことが目に見える形を用意しておきます。
- カレンダーに、やった日だけ印をつける
- 読んだページ数や歩いた距離を、1行だけ書いておく
- 1か月前の記録と見比べてみる
記録のしかたや、続けた日を目に見えるようにするコツは、三日坊主にならないための記事にもまとめています。週に1回ふりかえる方法は、週のふりかえりの記事で紹介しています。
5. 休んだあとに「戻ってきた」ことを喜ぶ
どんなに楽しくしても、やらない日はかならず来ます。大事なのは、休んだあとに戻ってくることです。
アメリカの大きなフィットネスチェーンの会員、6万1千人あまりを対象にした、とても大きな実験があります。15の大学の研究者30人が、運動を続けてもらうための54の工夫を考え、4週間ずつ試して比べました。
その中でいちばん効果が大きかったのは、予定していた日に休んでしまった人が、次の予定の日にジムに戻ってきたら、ちょっとしたボーナスのポイントをあげるというものでした。ポイントは日本円にして十数円ほどの、ほんのわずかなものです。それでも、1週間にジムに来る回数は、およそ27%増えていました[5]。
研究者たちは、ごほうびの大きさよりも、「休みを続けないこと」に目を向けさせたことが効いたのではないかと考えています。ただし、54の工夫のうち、4週間が終わったあとまで効果が残ったものは、ほんの一部でした。工夫は、いちど試して終わりではなく、続けて使うものだと考えたほうがよさそうです。
自分でもまねできます。
- 休んだ次の日にやれたら、いつもより少しいいおやつにする
- カレンダーに、戻ってきた日だけ別の色の印をつける
- 「休んだのに戻ってきた自分」を、ちゃんとほめる
休んだ日を責めるより、戻ってきた日を喜ぶ。そのほうが、次の1日がずっと楽になります。
今日からできること
- 続けたいことがやっている時間に楽しいかを、一度考えてみる
- 好きなことを1つ選んで、続けたいことのときだけにする
- 「いちばん効果がありそう」より楽しめるやり方を1つ試す
- やった日に印をつける場所を決める
- 休んだあとに戻ってきた日のごほうびを決めておく
全部をいっぺんに変えなくても大丈夫です。まずは、楽しみなことを1つだけセットにするところから、試してみてください。
参考にした研究
- 長い目で見た目標が続くかどうかは、「あとで良いこと」より「いま楽しいか」と結びつくことを示した研究
Woolley, K., & Fishbach, A. (2017). Immediate rewards predict adherence to long-term goals. Personality and Social Psychology Bulletin, 43(2), 151–162. doi:10.1177/0146167216676480 - 楽しさを大事にすると、取り組みを長く続けやすくなることを調べた研究
Woolley, K., & Fishbach, A. (2016). For the fun of it: Harnessing immediate rewards to increase persistence in long-term goals. Journal of Consumer Research, 42(6), 952–966. doi:10.1093/jcr/ucv098 - 好きなことと続けたいことをセットにする「テンプテーション・バンドリング」の実験
Milkman, K. L., Minson, J. A., & Volpp, K. G. M. (2014). Holding the Hunger Games hostage at the gym: An evaluation of temptation bundling. Management Science, 60(2), 283–299. doi:10.1287/mnsc.2013.1784 - 毎日の日記から、やる気が高まる日の出来事を調べた研究をまとめた本(日本語版:『マネジャーの最も大切な仕事』)
Amabile, T. M., & Kramer, S. J. (2011). The Progress Principle: Using Small Wins to Ignite Joy, Engagement, and Creativity at Work. Harvard Business Review Press. - 6万人あまりで54の工夫を比べ、運動を続けやすくする方法を調べた大きな実験
Milkman, K. L., Gromet, D., Ho, H., et al. (2021). Megastudies improve the impact of applied behavioural science. Nature, 600, 478–483. doi:10.1038/s41586-021-04128-4